ご挨拶
自分自身と友人, その家族が「通いたい」と思えるクリニックを目指して
医学生時代, 同級生との会話の中でプロから見た名医とは?という話題になりました.
最も多かった答えは. 「 軸となる専門性を持ちながら, 日常的に起こる健康問題も幅広く解決し, 病気を初期段階でキャッチし治療する医師」そして「それぞれの領域のプロに適切なタイミングでバトンを渡せる医師」でした
このエピソードはその後長く深く私の記憶の中に残りました.
卒業前にアメリカで総合内科の短期留学(University of Hawaii, Kuakini Hospitalなど), さらに研修終了後, 専門領域の心臓血管外科・循環器科で国内留学(大阪大学心臓外科 重症心不全グループ)・海外臨床留学(Central Chest institute of Thailand), その後に心臓の低侵襲手術や心臓・大血管のカテーテル治療などを数多く執刀する経験を経た後, 次はプライマリケア(健康問題を総合的・継続的に診る医療)を勉強しなおそうと決め, アメリカでのトレーニングを受けた専門医が多く指導医として在籍する札幌渓仁会病院の家庭医療部門で再びトレーニングを受けました.
ここでは,心臓疾患に関しては不整脈外来で心房細動の患者様の治療適応とくにカテーテルアブレーションの周術期管理や慢性期のフォローアップを学んだり, 生理検査室で超音波検査をより深く学びなおしました. 一方で, 糖尿病や喘息といった誰でも聞き覚えのある病気の解決から, 高齢者のうつ病・若年者の不登校や出社困難といったメンタルヘルスへのアプローチなども学びました.さらに薬では解決がつかない病気が山ほどあることも再認識し, これが契機となってスポーツ医学や栄養学やサプリメントの勉強も本格的に開始しました.
その後, 在宅医療を集中的に学ぶという経験を得ました. 渓仁会のスタッフの皆さんの御厚意でがん・心疾患・呼吸器疾患・脳血管疾患・神経難病・認知症・膝の病気や筋力低下の外出困難などなど, 様々なケースを数多く経験した後, 訪問診療部のリーダーを拝命しました. 当時の患家(訪問診療を受ける患者様)は200名弱で複雑症例が多かったので, 毎週木曜に勉強会・症例カンファレンスを行いとことん議論し, 週末は複数の大学の総合診療部の先生方とオンラインミーティングで症例研究をするという日々を過ごしました
私の実母はケアマネージャーを長くやっていたこともあり, アドバイスを受けながら患者様の生活介護の勉強もこの頃から始めました. ある時は福祉器具レンタルショップで商品比較して, ほんの数百円のレンタル料の違いでスペックが全く異なる介護器具を利用できるということを, ある時は, 医療家具専門店で最もストレスのかからない座り方・椅子やマットレスの選択方法を, またある時は, インソール専門会社で足底の筋力分布パターンを学び, 高齢者の下肢筋力低下のパターンや改善方法を学びました
ところで, 当時患家の50%弱は, がん末期の方々でした.
自宅で最期を過ごしたいという方々が多く, 残された貴重な時間を考えると, 1回1回の診療は自然と真剣となりました
終末期に襲いかかるとてつもない恐怖と痛み, 急変への不安をどう軽減・解消するか? それは医師の経験・技量とフットワークの良さを含めた熱意にかかっています
困難な症例も多いですが, 真剣に取り組めばきちんと結果が出ることがより多く, 患者様やご家族にもダイレクトに伝わるので大変喜んでもらえます.
外科医時代に経験した感覚と非常に似ていて, 意外にも自分に向いているなと自覚し, ほどなくして新たなライフワークとなりました.
(*いまでは, Good ending road ~よかったと思える人生を一人でも多く~ という言葉が,当院の訪問診療部のスローガンとなっています)
気力と体力が十分あるうちに理想とするクリニックを作りたいと考え, 医師として育った神戸, 中でも学生時代を過ごした街で仕事をしたいと思い, 東灘区・甲南山手の地で開業しました
その開業前に知人先輩に勧められて見学に行った複数のクリニックはいずれも素晴らしいクリニックで, ここでも多くのことを学びました
そこで共通点が1つあることに気づきました. とにかく地道な診療を丁寧に行って地域の信頼を得ているということでした. 近道なんかないんだ, と確信しました.
それは言葉にするとしたら, 自分自身と友人, その家族が「通いたい」と思えるクリニック です.
患者様が「わかりやすい」「納得できた」という爽快感を得て安心してクリニックを後にできる, そういう診療体験を誰もが得られるようなクリニックを目指していきたいと思います
院長 白坂 知識
資格
- 循環器専門医.
- 心臓血管外科専門医・修練指導医
- 外科専門医
- 胸部ステントグラフト専門医
- 日本プライマリケア認定医
- がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修終了 など